挨拶

プログラムコーディネーター挨拶

「重粒子線医工学グローバルリーダー養成プログラム」によせて

nakano 日本は、科学技術で国を創造することを目指していますが、医療分野では多くの治療技術開発で欧米の後塵を拝している憂慮すべき状況にあります。この状況で、今回、群馬大学が推進する「重粒子線医工学グローバルリーダー養成プログラム」は、まさに、科学技術創造立国を目指す日本が、医療分野での治療技術開発における国際的劣勢を超越するプロジェクトと考えています。
 日本では定位照射技術、同期照射技術、粒子線治療技術等が現在国際的にリードしていますが、こうした放射線治療分野はハイテク技術や粒子線加速器技術をがん治療に応用するまでに進化して、物理工学と医学が緊密に融合した学際的な学問分野となっています。今まで以上に、包括的学際的な知識が必要な学術領域と言えましょう。この先進治療技術の一つである重粒子線がん治療法は、強力ながん制御能に加えて治療後のQOLが高い最も優れた低侵襲がん治療法の一つであり、国際的にも我が国が世界をリードする数少ない革新的ながん治療法です。将来に向けてこの治療施設が国内外で建設が加速されており、重粒子線治療は、近い将来の重要ながん放射線治療法になると期待されています。また、我が国政府の「新成長戦略」の柱の一つであるメディカル・イノベーションを推進する中で、重粒子線治療は、さらなる技術革新を推進し、科学技術のトップランナーの地位を保持することが強く望まれています。一方、この治療は、特に、医学、放射線生物学、物理学が学際的、広域かつ複合的に構成されて初めて成立する「最先端がん治療法」であり、この意味で、重粒子線治療の実施とその発展には、最先端の機器開発に加えて、その高度な科学技術を使いこなす物理工学、生物学医学の幅広い知識と応用力を持った人材とリーダーの養成が不可欠です。
 群馬大学は大学院博士課程を有する大学の中で、重粒子線治療装置を所有している唯一の大学であり、重粒子線医学研究センターの下で重粒子線治療に関する大学院教育研究を遂行しています。さらに、加速器テクノロジーを活用した21世紀COEプログラムで形成された教育研究拠点において、世界をリードする重粒子線治療物理工学、重イオンマイクロビーム、医療用コンプトンカメラ、重粒子線治療臨床等の技術と経験を蓄積してきました。 「重粒子線医工学グローバルリーダー養成プログラム」では、これらを「重粒子線治療に関する物理工学・生物学・医学の統合教育」として集約し、医学系研究科と重粒子線医学研究センターの教員を中心に工学研究科の教員の参加を得て、医学・工学融合型の「リーディングプログラム重粒子線医工連携コース」を大学院医学系研究科の中に創設しました。そして、組織横断的な教育体制を敷き、重粒子線医学・生物学の基礎と重粒子線先端臨床研究並びに高度医療機器の開発・運用技術の両面の教育研究を推進します。重粒子線医学研究センターでは、国立がん研究センター研究所、放射線医学総合研究所(NIRS放医研)、日本原子力研究開発機構(JAEA高崎研)、宇宙航空研究開発機構(JAXA宇宙科研)、海外では、ハーバード大学/Massachusetts総合病院(MGH)、オハイオ州立大学、ドイツ重イオン研究所(GSI)、並びに国際原子力機関(IAEA)等の学術交流協定を締結している教育研究機関との教育研究ネットワークを活用し、国際的な教育指導体制を敷き、幅広い知識と国際的視野を持つグローバルな若手リーダーを養成します。本プログラムでは、重粒子線の物理工学の基礎を修得した上で、科学としての幅広い分野への展開を可能にする講義や実習を行い、優秀な学生は3年で大学院を修了可能なカリキュラムを作成しました。また、企業や関連医療施設でのインターンシップを行うこと等によって、大学院修了後のキャリアパスの拡充を図ります。
 これにより、各専門分野の領域を超えて活躍できる重粒子線治療をけん引する優れたリーダー、すなわち、重粒子線治療分野の推進と展開を支える、世界に通用する放射線腫瘍医ならびに物理工学分野や医学生物学分野のリーダー、及び重粒子線医療機器開発企業の研究開発リーダーの養成を目指したいと考えています。

重粒子線医学研究センター長・腫瘍放射線学分野教授  中野 隆史