重粒子線による腫瘍の感受性と反応性、正常組織の急性期と慢性期の反応性について正しく理解するためには、生化学、分子生物学、細胞生物学、生理学、解剖学、免疫学、腫瘍学などによる生命現象の知見に立脚し、時空間的かつ統合的な視点が必要となる。本コースでは重粒子線が生物に与える様々な影響の理解に基づいて、重粒子線治療の発展に貢献できる研究者の育成を目的としている。
また、従来から求められている独創的な研究を遂行する能力とともに、幅広い知識をもとに本質を見抜く能力、領域横断的な研究を行う能力、確固たる科学的道徳的価値観に基づき、協調しながら国際舞台で活躍する能力を備えたリーダーが育成される。さらに、国際的なプログラムを通して、グローバルに医療・社会に貢献する志を持つ重粒子線治療領域のリーダーの育成を目的とする。
講義にて、放射線の概要、放射線の人体に対する影響、医学利用、重粒子線の原理について知識を習得する。また、人体における基礎的な生命現象について知識を習得し、重粒子線がこれら生命現象に与える影響について理解を深める。
放射線生物学実習では、放射線生物学の一般的な基礎実験の手法と考え方を身に付けることを目的とし、放射線によるDNA損傷修復、細胞周期変化、細胞死・組織障害のしくみなどの理解を深める。 演習では、関連分野の最新の文献について抄読を行い、放射線生物学影響研究の国内外の進展と将来展望について理解を深める。また、放射線の生物影響研究にかかわる実験技術と実験結果の解析方法について指導し、研究成果を学術論文にまとめる方法を指導する。
主な論文テーマは放射線、特に重粒子線に関する以下の項目について、新たな知見を得るための研究とする。
・生命分子との相互作用
・細胞内および細胞間ネットワークのダイナミズム
・多様ながん微小環境での感受性と応答性
・正常組織の急性期と慢性期の反応性とその分子機構
・薬物療法との併用を踏まえた集学的がん治療法の開発
・放射線治療法の検証と最適化